大阪高等裁判所 昭和40年(ラ)25号 決定 1965年4月22日
抗告人 関西電力株式会社
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一、本件抗告の理由は別紙のとおりである。
一、当裁判所の判断
職権を以て本件抗告申立の適否を按ずるに、
会社更生事件において債務弁済禁止の一般保全処分(会社更生法三九条)がなされたときは、保全処分において裁判所の許可があるときは弁済することができる旨の除外例が設けられていても、一応抗告人ら債権者に対するすべての弁済が禁止されたことにかわりはないのであるから、これに対し抗告人ら利害関係人が即時抗告の申立をすることができるのはいうまでもないが(同条三項)、右保全処分に定められた除外例に基き弁済許可の申請をしたのに対し、不許可の裁判がなされたとき、これに対する不服申立が許されるものとは解し難い。けだし更生手続に関する裁判に対し不服申立が許されるのは、法が特に規定する場合に限られ(同法一一条)、右の如き不許可の裁判について即時抗告を許す規定がない。しかのみならず、弁済許可申請が容れられないときは、その申立人ないしは利害関係人は、従前どおり保全処分による弁済禁止の制約ないしは不利益を受けるだけであつて、不許可の裁判によつてとくに不利益を受けるわけでないから、保全処分自体に対する即時抗告のほか、この不許可の裁判に対して重ねて不服申立を許す実益ないし必要性は乏しいものというべきであるからである。このことは、保全処分の取消変更(同条二項)の申立が容れられないときには、これに対する不服申立の途がないとされていることからも推知しうるところである。従つて右不許可の裁判を以て保全処分自体に準じ、即時抗告をなしうるものとする抗告人の主張は採用し難い。
そうであれば、本件抗告の申立は不適法であるから、これを却下することとし、同法八条民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 金田宇佐夫 日高敏夫 山田忠治)
別紙 抗告の理由
まず、抗告人の即時抗告の適法である理由を述べる。
会社更生法は、更生手続に関する裁判に対して利害関係人が即時抗告をなし得る場合を、右更生法に特別の規定のある場合に限つている(同法第一一条)が、本件即時抗告は、同法第三九条第一項及び第三項に基き即時抗告をなし得る場合に該当する。
原裁判所は、申立外株式会社田中電機製作所の申立に基き、右田中電機製作所に対し、あらかじめ同裁判所の許可を得ることを解除条件として、一般的に債務の弁済を禁止する等の保全処分の決定をなしたが、右田中電機製作所の、抗告人に対する金七七、二〇五、一三九円の債務について、分割弁済の許可申請に対し許可しない旨の決定をなした。
然しながら、後述する如く、右抗告人に対する債務は、会社更生法上共益債権として更生手続開始後においても随時弁済されるべき債務であつて、右保全処分が会社更生手続開始決定までの間の財産保全のためのものである限り、当然同裁判所より許可を受け一般的弁済禁止より解除されるべき債務であるにもかかわらず、同裁判所が実質的な審理の後、共益債権にあらずとして不許可の決定をなしたのは、右抗告人に対する債務に対し会社更生法第三九条第一項にいう一種の「会社の財産に対する必要な保全処分を命じた裁判」をなしたものというべきであつて、抗告人は、右保全処分によつて直接の影響を受ける立場にある債権者として利害関係を有するので、右決定を不服として、同法第三九条第三項により即時抗告をなしたのである。